夢で逢えたらーー空気階段第4回単独ライブ「anna」

「2回流れたんで!!!」

カーテンコールでそう念押しした二人の表情には、まだ目に情熱が宿ってた。

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2/14、空気階段第4回単独ライブ「anna」千秋楽。
このご時世により、この回のみ配信チケットも発売された。…と言ってしまえば、いまや「そうなのね」程度の反応だと思う。でも、先に言ったとおり2回流れたから、っていうのが効いてる、はず。

1度目に流れた分のチケットは2019年12月の先行で5回公演のうち1枚は取れていたけど、前回単独(ルミネ公演とサザンホール追加公演のみ)のチケット争奪戦の余波はあったみたい。

2020年になると、かたまりの入籍があったり、冠ラジオが独立した枠になり時間も変更したりと空気階段を取り巻く環境も変わりゆくなか、私は静かにわくわく感を高めていた。

はずだった…

2月に入ると講談師神田松之丞が伯山を襲名するということでそちらに目が向きまくっていて、とにかく興行は成功してくれ、何もケチがつかないでくれ…と祈るばかりで。その間に刻々と状況は変わってた。

とうとう、ライブ直前に延期が決定。
でも延期だし。まあ、夏には状況変わってるっしょ。

…2020、夏。無理!

そして、12月にようやく3度目の正直で2021年2月に公演決定。
もちろん、チケット先行に申し込んではみたけどあっさり落選。状況が状況なので早めに配信オンリーに切り替えた。と言いつつ、観たのは配信期限ぎりぎりの次の日曜日という有様。でも、結果体調万全、視聴環境万全の状態で観てよかった。スマホで寝っ転がりながら観るなんて考えられなかったから。

 

まず、キービジュアルからして、とりあえず毎年恒例単独やります!っていうよしもとでよくあるノリではなく、ひとつの作品なんだと突きつけられた気分。

オープニングはおなじみの「タンゴ」。
Vo.江戸アケミの頽廃的なあの声で一気にどこかへ引っ張り込まれる感覚。

オープニングはプロポーズのコント。場所は喫煙所。アンナ〜!もはや、こういうあっさりしたのもできるんだ、って意外に思うくらい、いつも濃い世界ばっかりだからとても新鮮。しかも、annaの中では一番自分にしっくりくる。私もめちゃめちゃ離婚したし。「ま、こういう人生もあるよね!」。
虚構と現実を受け入れる準備万端。

オープニングムービーとともに流れる曲はYMOの「TONG POO(東風)」。
頭が沸騰しそうな夜は、これとテクノポリスをひたすら交互に聴いてしまうくらいなので爆上がり。
赤いワンピースの二人が水に潜る感じもぴったり。

一個一個の選曲も、大事なエッセンス。

 

「27歳」♪酒と泪と男と女
早逝のアーティストは27歳で死んでる説。
からの、わかりやすく現実を虚構の淵からこねくり回してくれるコント。お前があのときの…!をこの切り口から見せてくれるのたまらない。
氷室1:布袋100とDEAD or ジョージが好き。

古沢太郎のヒット曲は「アンナ」。

 

「SD」♪ラ・カンパネラ
鈴木もぐらの演技力が惜しみなく楽しめるこのパターンも大好き。
ゆうえんちの刑事さんより眼力が強い。おじさんじゃない演技の時、もぐらさんのエグい生命力が手にとるようにわかる。

ツイスターゲームに執着する異常犯罪者。
"世界を破壊するのかAV出演するのかどっちかにしろ!!!"が、なんか多分そこで言うことじゃないんだけどそこでしか言えない感じがよかった。
…自分なら選べない。

あと、あの刑事さんはあいらつかさちゃんで抜いたのかな。

 

「メガトンパンチマンカフェ」♪ダンバインとぶ
伯山カレンの反省だ!で潜入してほしいタイプの野良コンセプトカフェ。

おなじみ関健や今回のデビルキック伯爵が受け入れられてる世の中って最高の理想郷なんじゃないのか。

余談だけど、去年フワッと踊り場の人気コーナーだった、「キタノ映画みたいな話」を思い出した。

ノスタルジー心くすぐられてめずらしく投稿したら採用されたのは、こっそり言っておく。

大好きなSummerに乗せて読んでもらったたいせつな思い出。

 

ミスターアイホープは全人類の道標。
表と裏、正義と悪、敵と味方、天国と地獄、戦争と平和
そういうのを超越した、争いのない世界なんだね。

 

「コインランドリー」♪夢想花

「♪忘れてしまいたいことが今の私には多すぎる」

「心のお洗濯をするんですね!」

「お前が言ってる不安とか怒りとか悲しみとかそういう汚れっつーのは人間がみんな抱えて生きてくもんなんじゃねーの?」

ほんとその通りでビリビリくる。
コインランドリーは人生の交差点。森淳一の「ランドリー」読みたくなる。
洗濯機が家にない生活は、人生で絶対に通っておくべき道だと思う。あそこは哲学する場所。

心のお洗濯をする人には出会いたくないけどね。あいつがいる世の中は理想郷じゃない、たぶん。

きれいな心、忘れないでね。
(さいきんまでずっと「ハートスランプ二人ぼっち」をヘビロテしてたのだけど、これ観てからずっと「夢想花」)

 

「銀次郎24」♪電気ビリビリ
「勃起力発電」「エレクトリカルオピンピン」って、オーケンみうらじゅんの描く童貞が妄想してそうな脳内世界観で、なんかすごく青くさくていい。曲も電気だし。

個室ビデオのシチュエーションで、VRゴーグルが出てきてパンツ下ろして…の展開からそうなるか〜!って、ひっくり返りそうになった。

よく考えたら、シコる動きは発電と関係ないのか。そこも童貞くさくていい。童貞文化好きだけど、絶対に味わえない感覚なのが歯がゆい。

 

「Q」♪天国と地獄
風邪の時に見る悪い夢、のやつだ。

あと、前後の流れから正直つなぎ的なコントだなと思ってしまったけど、これがちゃんと後から効いてくるすごさ。黒子もぐらが幕間キャラじゃなくなるすごさ。

余談も余談だけど筋肉少女帯に「捨て曲のマリア」って曲があって。
文字通りアルバムの中にある捨て曲的ポジションだけど、これがあるからアルバムが成立してるし、ないと成り立たないみたいなとこが同じだ、とか思ってたら、この曲が収録されてるアルバムが「蔦からまるQの惑星」で目ん玉飛び出ました。Q。それだけです。
でも、1曲目アウェーインザライフからラストのアデイインザライフまでの流れもannaと近くて、蔦Qと同じで、まるごと一生愛し抜ける作品だと確信。

 

「anna」♪スローバラード

「♪カーラジオからスローバラード」
イントロのピアノから泣く。もう泣くよ。

コントのことは横に置いておいてまず自分のこと。
この先、私このコントをどんな時に観たくなるんだろう…
別に好きな時に好きなだけ楽しめるのに、大事に大事にしまって時々ひとりでこっそり開けて見て、しあわせな気分になって、またクローゼットの奥にしまい込むみたいなコント。

ラジオが題材のコントなんて、この先ベテランに近づくにつれ絶対にできないと思う。

だから、今の旨味も灰汁もないまぜになってるみたいなこの感情をそっとしまい込みたい気持ちもある。

肝心のコントは、ここまできたら見てもらった方が伝わると思うけど。

いまさら羨ましがることすら違法だけど、鬱屈した学生時代にこうやって深夜の電波で繋がっている相手がそばにいるとわかってたらどんなに心強かっただろうかとハンカチ食いちぎりたくなった。「こんな近くにリスナーがいますかー!?」
同じラジオを聴いてる人が近くにいるっていう安心感は味わえそうで味わったことない。

(でも、溢れた気持ちをつぶやけば自分は知らなかった曲の情報をリプでもらったりするのも、みんなでannaを共有してるからだ。こんな田舎に出戻ってまでこんな幸せ味わっていいんか…)

「チャールズ宮城のこの時代この国に俺が生きてるからって勝手に勇気もらってんじゃないよラジオ」は、長野のローカルラジオでやってる「川村道夫の大自然まるかじり」くらい好きなタイトル。

 

あと、annaは多く語らずと思ってたけど、これだけは力説したい。
もぐらが先生、かたまり生徒の設定ならよく見るけど、「吉村作治から預かった」でもぐらがあのヒゲの生徒をそれ以外特に言及もなくやり切れちゃうのは、よく考えたらめちゃめちゃすごくないすか???それで乗り切ろうとできます??なんの違和感もなく見てたけど、よくよく考えたらあんなヒゲの学生がいるか!
学ラン着るために剃るのはまあナシだけど、だからって代替案が吉村作治なのが個人的にはたいへんにツボ。
さらによく考えたら、もぐらを学園コントの登場人物にするために定時制高校の設定にしたのも、時間遡って鳥肌立つ。
定時制の恋のネタおろしの瞬間に立ち会ったの、一生自慢する!!!)

そして、女の10年の成長をしっかり見せてくれるかたまり。
ルンバを教室で動かしたときのパッとはなやいだ表情は、お笑いの次元じゃなかった。笑えないレベルだよ、いい意味で。

この公演に限ったことじゃないけど、コントの世界で喜怒哀楽を描くのは当たり前にやってることなのに、空気階段はごく当たり前のように生老病死を描いてる。
ほんとうに、ほんとうにすごいな。
お笑いって、コントってすごい。

2回流れて、やりたいことやぶつけたいことが増えた結果、annaがこれだけ長いコントになって、全体3時間になるのも至極当然。空気階段って、二人とも、本当にラジオで生かされてきたんだな。

何もない家で森本毅郎スタンバイだけ聴いてたもぐら。
大学中退して、引きこもって爆笑問題カーボーイ聴いてたかたまり。

その二人が出会ってコンビ組んでコントで賞もらって踊り場という番組持って、それを私たちが聞いてネタ送ったり勝手に勇気もらったりして、そこからまたannaが生まれたのならほんの一端だけでも担えたような気がして、なんだかニヤニヤするし鼻息荒くなってる。

 

勇気ラジオ最終回で、チャールズ宮城はこの先もうこの時間に逢えなくても、リスナーに夢で逢おうと訴えかけた。
この後眠りについたら、夢で逢おうと。 「聴いてください、僕のベストソングです。銀杏BOYZ"夢で逢えたら"」


ギターのフィードバックの音が全てを切り離してくれる。

「♪ああ 夢で逢えたらいいな」
これからは、夢で逢えたらいいな、と思いながらしばらく聴けなくなってた踊り場を寝る前にまたクラウドで聴こう。

時間も内容もザ・人生過ぎて、ガチの苦境にいるときは度数が強過ぎて。

とかく、投稿だ採用だステッカーだMVPだ◯◯リスナーだ男だ女だ常連だリアタイだ何年聴いてるだその日のノリだ炎上だ神回だってなりがちな世界だから、しんどい時も多いんだよ。
正直、私はローカルラジオに何の気なしにメールしたり、パーソナリティとの電話でどうでもいい話で繋ぐくらいがいい。

でも、どれだけ救われてきたかって話でもある。

チャールズ宮城が最後の最後にかけてくれたみたいに深夜のラジオから流れてきた曲で生き延びられたり。
今日は送ってみるか〜、で採用されて小躍りしたり。

だから、空気階段や踊り場リスナーやこのコントを見た人、そして山崎くんや島田さん、チャールズ宮城と同じくらい、私もラジオが大好きなんだろうな。

きっと、私はヤマザキ春のパンスト祭りや水曜日よりの使者みたいなリスナーじゃなくて、最終回にギターケースを開けながら聴いてた古沢太郎や、洗濯機の中で聴いてたあいつの方なのかもしれない。

たぶんチャールズの照れ隠しであんな終わり方になってしまった勇気ラジオ。

最終回の後の、アナウンサーの単調な提供読みで一気に現実に引き戻される感じ。でも、TEIMPOCO。そのときのクスッとした表情のまま、夢の世界にいきたい。

 

エンドロールは、「日曜日よりの使者
夢で逢えたらからもうわんわん泣いてたけど、ここで追い討ち。

そうか。二人は日曜日よりの使者だったんだ。
東京赤坂・TBSラジオ、AM954、FM90.5 土曜27:30-28:00の使者。

いやいやいや、私が「適当なウソをついてその場を切り抜けて誰一人傷つけない日曜日よりの使者」であるとされてた男にどれだけ生かされてきたか。
恋愛も仕事も価値観も、すべての生きる原動力だったんだから。
15年前の私に、またもや伝えてあげたいね。すべらない話の不定期の放送と夜中にひたすら放送室の音源聴くのだけが楽しみだったんだからね。

こうしてすべての物事のトゲみたいなものが与える刺激が、また別のレセプターに引っかかってどこかしらで確実に繋がってれば生きていける。

きっと人生のどこかで交わる時がある。ていうか、夢で逢えたらいいし。

「♪たとえ世界中が土砂降りの雨だろうとゲラゲラ笑える日曜日よりの使者

うん、ゲラゲラ笑える。コロナ禍でも離婚しても生きていける。

 

ウソみたいな現実に振り回されてる私は、現実をこねくりまわすコントをする空気階段が大好き。
二人も、相当に現実こねくり回されてるのかもしれないけど。

やっぱり二人の人生がコントを作ってる。

波があればあったで、瑕にもなるけどそれこそ深みにもなるんだろうな。でも、ラジオありきでやりすぎるのはやめてね。煽り過ぎないでね。

空気階段は、過小評価も過大評価もされてないと思う。(なんだろう、伯山とかさらば青春の光とかはもっと正攻法で評価されて売れていいと思ってる)いいことなのか悪いことなのかはわからないけど。今は、あえてもがくことなくこのままでいい気もする。

来年の単独ライブもたのしみ。タイトルはなんだろう。
その前に、キングオブコントか。
日曜日よりの使者は手強いよね〜〜〜

 

ま、そんな人生もあるよね!